愛に満ちた「慈父」のような『産業人魂』挨拶文
処女作『経営者の肖像』の撮影から20年。
いま一度、経営者の撮影を考えていた折り、リーマン・ショックが起きた。
日本はどうなるのか‥‥。「百年に一度」の大不況といわれるが経営者はどのように受け止め,もの作りの原点に戻り激動のときを乗り越えようとするのか。
その姿をカメラに収め、後の時代の人に2010年前後の日本の経営者達の思い、風貌を残しておきたいと強く思った。
高度成長期まではカリスマ性を帯びた経営者が多く、最近の経営者は小粒だという意見もありが,時代のスピードが早くて常に決断や覚悟の連続である。
昔のようにドーンと構えているというわけにはいかないようである。
それだけに,集中力、気力、体力、精神力などが強く求められる。経営者に求められる素質や条件が違っているようである。
撮影スタンスとして、なるべく「自然体」の人物像を描きたいので、私が経営者の会社を訪問するのではなく、経営者に私の仕事場まで来ていただいた。
アトリエにおいでいただいたときに、深刻な厳しい表情の写真になるのではと思っていたが、意外と明るい笑顔の表情をいただいた。
閉塞感漂う雰囲気のなかでは、明るく振る舞わないと周りが不安になるらしい。
とにかく皆、明るい楽天家であった。常に前に向かってチャレンジする方々。
厳しい表情を時たまお見せになる方もあったが,さまざまな経験をされて来たことで優しさと厳しさが,顔に刻まれていた。愛に満ちた「慈父」の顔のようだと気づいた。
2010年冬 海田 悠 |